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本日はシリーズ第5弾。「カインの証」について振り返ります。
■カインの証
通常の攻略ルートではなく、任意攻略エリアにもかかわらず、ビジュアルやNPC、イベントの魅力に溢れるカインハースト。
とある謎を解いた先に待つ、血の女王アンナリーゼ。彼女と契約を交わすことで手にできるのが、この「カインの証」という狩人証です。
入手までの道のりがやや困難ですが、美しいカインハースト装備、独特な武器「レイテルパラッシュ」と「千景」が購入可能になる印象的なアイテムです。
「カインの証」の商品化にあたっては、緻密な造形の再現はもちろんですが、特に獣の紋章と赤い着色部分をどのように表現するかが鍵でした。
原型製作は、大畠雅人さんです。
繰り返しになってしまいますが、毎回お見事!
へりに沿った額縁の装飾のようなディテールは、長い年月を経て部分的に削れ、欠けた風合いを狙いました。
ゲーム内グラフィックでは確認できない裏側の造形は、基本的には大畠さんにお任せしています。
おもて側の造形を部分的に拾い、こすれて甘くなった装飾の様子を説得力をもって見事に表現しています。監修も一発でOKをいただくことができたそうです。
●プレシード加工という技術
株式会社シノンさんが独自開発した「プレシード」とは、樹脂をベースに使用した表面処理加工です。
プレシードにも種類がありますが、その中でも樹脂を積層することで立体感を持たせる「DIPP」という技術をTORCH TORCHでは主に採用し、とくに「星の瞳の狩人証」で大活躍しました。
TORCH TORCHと「プレシード」の出会いは「静かに眠る竜印の指輪」製作中のことでした。
「ダークソウル/ リングコレクション: 静かに眠る竜印の指輪について」
この記事の結びに、「最近完成したとある新作には、この技術がまったく別の形で使われています。」と、ありますが、これがカインの証のことだったのです。
「静かに眠る竜印の指輪」では、約半年にわたりシノンさんに開発協力いただいたものの、プレシードの採用は見送られました。
そこで得られた経験をいつかぜひ活かそうと考えていたところ、早速その機会が巡ってきたのです。
実製品での工程は、おおまかですが上記の通り。それぞれの工程を解説いたします。
工程①原型製作・鋳造
原型をシルバーで鋳造。写真では白っぽく鈍い色合いですが、これを磨くことで皆さんがイメージするような銀色に輝きます。
工程②真鍮メッキ
左:製品と同じ厚みのメッキ 右:メッキが厚く、ディテールが失われている |
鋳造したシルバーに、薄い真鍮メッキをかけます。このメッキで、全体の薄い金色を表現します。
メッキをかけるなら、はじめから真鍮で鋳造すればよさそうと思うかもしれませんが、それでは望む色合いが実現できません。かつて「寵愛の指輪」で試作を繰り返した経験が活かされました。
左:真鍮のみ 右:シルバーにうすい真鍮メッキ |
真鍮で鋳造すると黄色みが強すぎて、思うような色合いを表現できません。薄い金色を表現するにはシルバーに真鍮めっきをかける、それも“短い時間で”というのが重要です。
通常の時間の半分ほどで引き上げることで、銀と金が混ざった絶妙な金色を表現できることがわかりました。
「カインの証」では、まさにその手法で薄い金色を表現しています。
プレシード加工もそうですが、製作を重ねることで、他のアイテムに活かせる引き出しが増えていくことを実感しています。
工程③プレシード加工
・獣の毛並み
・ベースになる赤色のテクスチャ
・朱色を乗せる部分のマスク
まずは、マスクの形状で"金色の樹脂"を積層させて段差を作り、二層目に赤色のテクスチャを乗せます。
色付きの3Dプリントを、金属に乗せていくようなイメージです。
そして、獣の部分には毛並みを積層します。
この毛並みは、TORCH TORCHでTシャツのイラストを担当していただくこともある、芳川さんに作成していただきました。
試作の過程がありましたので、ついでに掲載します。
引きで見ると違いがわかりにくいですが、端のぼかしの処理が異なります。微妙なニュアンスまで再現できるプレシード加工、本当にすごい技術です。
何パターンかテストを繰り返し、ベストな仕上がりを探りました。製品版では、Aの「周辺ぼかし無し、汚しあり」を採用しています。
工程④汚し塗装による仕上げ
製品版では、ひとつひとつ手塗りで汚しを加えていますが、(写真:右)プレシードのデータ自体に汚しを加えたものもテスト製作しています。(写真:左)
一見、製品版と同じものに見えますが、どれも試作品。
カインの証にかぎったことではありませんが、原型・鋳造・加工、あらゆるパターンを試し、製品版の使用を検討しています。
※ ※ ※
もし思うような表現が出来なかった場合として、別のプランのアイデアも検討していました。
原型データ自体に、凹で獣の形状を加えています。ここに朱色と獣の毛並みを、プレシード加工で載せる案。
鋳造後、レーザー刻印を2回。それを再び型取りし、鋳造。獣と毛並みが追加されたものにプレシード加工を施す案。
どちらも造形自体にディテールを増やしておくアプローチでしたが、造形とプレシード加工がズレてしまうおそれがあり、印象に著しく影響してしまいます。
製品版の仕様の場合、加工位置がズレることもありません。色だけでなく、厚みを加えられる、プレシード加工ならではの特性を活かすことができました。
※ ※ ※
ゲーム内グラフィックでは、ペンダント部分のみですが、真鍮に金古美加工を施したチェーンをセットした、ネックレス状態でお届けいたします。
モチーフの持つ特徴である、エレガントな雰囲気がただようアイテムに仕上がりました。ふるびた風合いを、最新技術で再現する、TORCH TORCHらしいアプローチでもあります。お手に取っていただけますと、幸いです。
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∴桑原∴
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