July 10, 2020

ダークソウル/ リングコレクション: 静かに眠る竜印の指輪について

こんにちは、原田です。

ダークソウル × TORCH TORCHのリングコレクションから、第10弾となる「静かに眠る竜印の指輪」がただいま予約受付中となっています。
発表から、大変お待たせいたしました。


2018年の一月に、アンケートを取りました。

「竜印の指輪」シリーズで一番好きなものはどれですか? という内容です。


アンケートに参加してくださった方の半数以上がこの「静かに眠る竜印の指輪」を選ばれたということで、「吠える」「佇む」「幼い」の魔法強化系3種が束になっても、それを上回ってしまうほどの人気でした。

「静かに眠る竜印の指輪」の効果は、「装備者の出す音を消す」というもの。装備すると敵に見つかりにくくなるので、攻略がかなり楽になります。


「デモンズソウル」で「盗人の指輪」を愛用していた方は、一作目のセンの古城で見つけたときに「これだ!」と思ったのではないでしょうか。隠密プレイの心強い味方ですね。

二作目では誓約「ネズミの王」の報酬となり、なかなか入手のハードルが高いこともあって、使っていた方は多くなかったかも。(効果も弱くなってしまいました。)

三作目では、ヴィンハイムの出身の魔術師・オーベックから貰うことができます。出会いたてはツンというかシュッとしてますが、お付き合いを続けるうちに態度がイイ感じになっていくキャラクターですね。そんな彼から貰う指輪なので、味わい深いものがあります。

ゲーム中のビジュアルです。


立体解釈がけっこうやっかいで、側面がよくわかりません。レイヤーが何層も折り重なったような、複雑な形をしています。


2018年の年末、開発初期に描いた立体予想図が残っていました。
このあといくらかブラッシュアップはしますが、大筋はこんな感じかということでフロム・ソフトウェアさんに確認を取り、原型の制作がスタートです。

ダークソウルの「リングコレクション」、Bloodborneの「シルバーコレクション」のメインで原型制作を務めていただいている大畠雅人さんに、今回も造形をお願いしました。

有機的なニュアンスのある造形は非常に難易度が高いのですが、大畠さんはずばり仕上げてくださるので本当に稀有なかたですね。
今回のものも、ほぼ一回でずばりの形を出してくださいました。

フロムさんからリクエストされた修正は一回だけで、原型制作は本当にスムーズに進んだのです。

……。

ここでまた、茶色問題との戦いがはじまりました。
茶色問題とは、過去のシリーズの「スズメバチの指輪」「狼の指輪」でぶつかった、「シルバーを意図的に茶色くするのはとても難しい」という問題のことです。


「スズメバチの指輪」「狼の指輪」は、何度か燻す工程の中で、コイン状の部分の中央から外側に向かってグラデーション上に磨くということをしています。


加減がシビアで絵心が要るので、結局我々自身でひとつひとつやっています。(一度工員さんに任せたら、グラデーションでなく真ん中らへんをただ丸く磨いただけになってしまい……。)


最後に特殊な塗料を使用して茶色を乗せており、それも加減がシビアなので我々自身で行っています。

この量産は……正直すぎて書いていいのかなと思いますが、若干言葉を選んで言うと、もっと効率化しないといけないのです。

我々メンバーの限られたリソースが量産に行ってしまうと、他の商品の開発がストップしてしまいます。量産の実作業はもっとアウトソーシングできるようにして、我々が行うのは検品にとどめないといけないのではなかろうか



そう思った時期もありました。

大きな大きな回り道になることも知らず……。

……。

※  ※  ※

ここからは、最終プロダクトにはほぼまったく関係ない、その回り道の話です。
ここに書くことで供養とさせていただきたいと思います。


「静かに眠る竜印の指輪」は、竜の部分の塗り分けがあります。
平面部分を暗めに燻して、竜の部分を半分磨き、茶色い塗料を筆で塗り分けして乗せていきます。

この仕上げは、絵心が要求されます。
品質を均一化させるには、なにか手段を講じないといけません。

そこで試されたのが、金属にプリントを施す技術です。
限られた工場にしかできない非常に特殊なもので、かなり自由度の高い表現が可能になりますから、これはやってみるべきと思いました。


まず、原型です。これは1パーツ。

大畠さんにお願いして、竜の部分をプレート状に分割してもらいました。


こんな感じの2パーツです。




この竜のプレートに、プリントを施していきます。


色々試します。


何度も修正を重ねていきまして……

形やら色やら、 濃淡などをプリントしては直して調整を重ねました。



凹凸があるので、プリントされたものを見て陰影が足りないところは塗り足していったりします。
デジタル燻しだ! 最先端! とか思いながら……

何回やり直したでしょうか。

できたのがこちらです。


これは……
ダメですね……。

はじめから全然ダメならよいのですが、「なんだかもう一歩な感じ」があって、それにズルズルとやられてしまいました。

結局、この手法はボツにすることになりました。
ずいぶん長いこと、少なくとも半年はいじっていたと思います。
付き合ってくださった職人さんには、本当に申し訳なく……。


結局、量産の色付けは我々自身で行います。これまでと!同じく!

こんな感じで!

分割も無くなって、2パーツでなく1パーツに戻りました。
この製品に関して言うと、本当にただ最初に戻っただけです。

しかし、転んでもただでは起きません。
最近完成したとある新作には、この技術がまったく別の形で使われています。これこそ本当の供養。

そのアイテムがお披露目になったら、この技術についてあらためて記したいと思います。

※  ※  ※

第一弾の「銀猫の指輪」が2017年7月の発売でしたので、シリーズが始まってちょうど3年になります。
10作を記念して、インベントリ風に並べてみました。



本物のゲーム画面はこちらです。


けっこう違和感がないですね。


そっくりに作りました。なかなか感慨深い。


そんな中でこの「静かに眠る竜印の指輪」は、「生命の指輪」と並ぶくらい日常使いに違和感がない指輪だとも思います。


渋くて良い。
アームの部分が妖しくうねっているあたり、非常にダークソウルです。お気に入りですね……。

ご予約はこちらからどうぞ!
https://torchtorch.jp/collection/darksouls_slumbering_dragoncrest_ring/

毎度毎度、長い文章で恐縮です。
お読みいただき、ありがとうございました。

それではまた!