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本日はシリーズ第6弾。「撃鉄の狩人証」について振り返ります。
■撃鉄の狩人証
複雑な機構を擁する仕掛け武器ばかりを生み出す「火薬庫」の源流、オト工房が発行した狩人証。
入手によって取引可能になるアイテムも、爆発金鎚や時限爆弾など、技術とクセが盛り込まれたものばかり。まさしく異端の工房です。
見慣れぬ形状で、モチーフがなにか掴み取れません。(後に判明します)
印象的な錆色の風合いも、再現するうえで、かなり重要なポイントでしょう。
狩人証シリーズの原型は、全て大畠雅人さんが担当。
今回も、「これだ!」と思える形状の捉え方。大畠さんはほんとうにすごいです。
ところが、我々は大きな思い違いをしていたのです。
■形状の再考証
撃鉄の狩人証には、鉤型の突起があります。
初期の原型データを確認すると、この突起を別パーツとして造形しています。鋳造の都合ではなく、我々はこの突起のことを「撃鉄」を表現した造形なのだと勘違いしていたからです。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEhQd2GyIIDdz97kxHFZqQ3GE2soIoJDvenCvxkSC_ihBflbvjMN6Cy_C5nsUJVSoKU3_sGFPdSIP0vLBkzIErRk_vmIEDLu7v8QBA5GbUfZVei0-XNtItGrDJlGiTTa_9u320qNQudWm_WCx1XyLBff0x9AgAfle469TRdD1NyWHp1OxryLexn597HixA=w400-h228) |
(例に出す銃のクセが強くてすみません。) |
唐突ですが、フリントロック式のピストルです。
もうお気づきの方もいらっしゃるでしょうか。わかりやすく拡大してみます。
赤線で囲った部分が、この銃の撃鉄です。この形、一目瞭然ですね。
「撃鉄の狩人証」は、それそのものが、撃鉄をかたどっていたのです。
原型の監修チェックでこの部分を指摘され、本商品のディレクターを務めた原田は「自らの無知を深く恥じた」そうです……。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEg40hxRBZKgfZQmk1QSqRpm8N8v3uxBsmDJds-U7fWDdcgYbL3QCyRDPrAVJRH_vWMhLB0R16G_3JU2DfqRo_s9jtqiChHLzHWpyDfmjDin3OV2__s-kpdjJ2Hkh9bMqb_i3AZt-y5YhNsBXAVUpxi84EEmbjmTL7CHnrom1W1yZmYOU-sb-pt727dRwg=w400-h349) |
左:試作版 右:製品版の鋳造サンプル |
これを踏まえ、本体と突起を一体化しました。試作版と製品版の、最大の違いです。
こうして解釈も正しくなり、「ゲーム中グラフィックを再現した立体物」まではたどり着くことができました。
しかし、次の大きな課題が浮上してきました。
アクセサリーとして、どうまとめるか?
本体につながるチェーンをどう処理するかという点、これが簡単そうに思えて予想外の難敵でした。
■量産化困難な構造への挑戦
まずはゲーム内グラフィックをもとに、描かれている構造を推測をまじえつつ読み取ります。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEhqipEUj4hIzjCuw_F4EmqLe4PixGxdDRcS8NCcupUQVlb5Ea_l0-wek0_8Y42DDwTAMmB330EexiGT3ufVmXTh8JrIBiPMh5TLBBo0yJ2BHEzl6UMmHLWNw96DjYPlu7Wim_eDe8kem8ZtO-0c24A-jZd4GsI75wkZfffGZv6GDEIv6cC2rp-3YgeR3A=w400-h300) |
原田による図解。 |
確認できた構造は上記画像の通り。
「大きいカンⒶ」に、小さいカンを二つ通す。その状態で、上部の突起に通してかしめる。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgWbivZz02X5qGuz-KqdGYuQEl-CnSsh_nDWEq0LXooa0mnDSSf1p9Forz0VwzfqBNKrRWo5xcw-QupoesdvWEXt0G-nfvPSamc7xag3kA-eYl3fZ0yBM3Qyhz0iYSnX5yKupiiwSZdVQ_VsoUiIRQwW8pmOgExP8SBopcwPinE9wft5Ov-NWYKUdeKOQ=w400-h234) |
赤丸部分が「大きいカンⒶ」 |
構造そのものはシンプルではあります。
が、あまりに小さすぎて現実的ではありません。
チェーンを取り付けるためのカンを、そのままペンダントに付けるとこうなります。
サイズ感といい、取ってつけたような見た目といい、あまりにも不自然です。
どのようにして解決したか。
図解した構造そのものを、造形の時点で盛りこむアプローチをとりました。
試作版のような野暮ったさはなく、自然にまとめることができたと感じています。
細かいうえに、チェーンによって構造が伝わりにくいと思いますので、試作版同様、ペンダント部分だけ見てみましょう。
小さいカンとチェーンの1コマ目を模した造形を、斜めに配置。首から下げた時の状態を、疑似的に再現するイメージです。
構造に関する指示書を見ると、確認しやすいと思います。
試作版とはほんのすこしの違いながら、格段によくなっているのを感じていただけるでしょうか。元絵の雰囲気と、アクセサリーとしての美観を両立できた自信作です。
■錆色表現の追求
印象を大きく左右する、錆色の表現。
まずは、錆を表現する専用塗料でテストを行ってみました。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEjTP5CBWjT4G-C9JOMOfmFFc9Ppsaaz3Q-RZcYs0dmX_mdjSrpi9yRYuY9H5SgjRzB2fnVaE31EvzGSZGPru_VaZKTRGsqazQY1_JVCpPqd8AScKvMuTJMPF2a0BpkJeSS0g0r9sfWVV0FHLtJ2c4dGc5aIICQl7SjZFj31VwfNAqcoR3Y6f7mknJZeAw=w400-h266) |
錆塗装の確認テストの為、剣の狩人証で実施。 |
かなりいい雰囲気なのですが、爪でこすると塗膜が簡単に剥がれてしまうため、残念ながら不採用となりました。
シンプルに考えます。
ゲーム中ビジュアルでは地金が銅のように見えるので、試しに銅で鋳造してみました。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgu97j5UdnTbtIA4VQtRIQX6oVDQ5PXs-h-QAyHVXoq1dcyfaL-D8ljOAjNtpVrFJmsOAhlkzWfBiEqbkOWrK8LapaRXicdXfp0Fjjc9SKTLAMI9VCtA-sx161iRGu_7qc48ZUFjIS0cfyt2aCnyLAgOyEizLuVRm9YpXemaqwcQWxd0bwm8CBLzYVVaA=w400-h299) |
左:銅で鋳造後、ウェザリング 右:銅で鋳造 |
汚し塗装を加えても、どこか単調で、いまひとつなことがわかりました。
銅の色合いを活かしつつ、深みが出るよう工夫したいところです。
再びシンプルに考えてみました。
色に深みのある金属は、だんとつで銀です。ならば銅に銀を混ぜて、理想の合金を作ってしまおう。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEiJXz5_3es5iIvdwi6L88bAb3ugNdkoQJBTFwAz23KHx_7N9vXNTtw6gSF-qycYvEDFVA15NDvygpRS70V1QtNpDvmEYtoZRKdF1ggcjE0KZBDp8WpHUilKVyNdPGiLzP4NOk_yr651oo9tiYCCjsCB6DeR4vlkdNQiaxAxZl11QCi1fq2lZnqXZdg8SQ=w400-h309) |
左:銅70% 銀30% 右:銅80% 銀20% |
割り合いを変えつつ、合金を作成。理想的な色を探します。
写真に写っているのは二種の配合ですが、様々な割合で試しました。(その中には、真鍮を加えるといったテストもおこなったりしています)
銅70%・銀30%の合金が、理想の色合いになることがわかりました。
作った後にわかりましたが、この配合は「四分一」またの名を「朧銀」(ろうぎん・おぼろぎん)という、既存の合金に限りなく近いものだったようです。
製品では、この特製合金を使って鋳造し、それを燻して磨き、造形の凹みには手作業でオレンジ系の塗料を差して、ゲーム中のビジュアルにより近づくように極限まで手を加えています。
※ ※ ※
ハードなイメージがありますが、美しい曲線と、アンティーク調の落ち着いた色合いによって、意外にもシックな雰囲気が漂います。
形状の修正、構造の再検討、オリジナル合金の開発、紆余曲折を経て完成した「撃鉄の狩人証」。じつはアクセサリーとしてもかなり使いやすいものになっています。ぜひお手に取っていただけますと幸いです。
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