May 31, 2022

Bloodborne / シルバーコレクション:ノコギリの狩人証・車輪の狩人証について

ご好評を博している『Bloodborne』シルバーコレクション、ただいま再生産分のご予約を受け付けております。


本日はシリーズ第3弾と4弾の、「ノコギリの狩人証」と「車輪の狩人証」について振り返ります。

■ノコギリの狩人証



ヤーナム市街の下水道で拾う、ノコギリの狩人証。
メインビジュアルで狩人が持つノコギリ鉈を思い起こさせる意匠で、Bloodborneを象徴するデザインのひとつと言えるかもしれません。

原型を担当したのは、今回も大畠雅人さんです。狩人証は全て大畠さんに担当していただいています。

今回もさすがの手腕で、一発で素晴らしいものが上がってきました。

原型の初回チェック時の画像

大畠さんは本当にすごすぎます。


当初は裏面にも表面と同じような模様が刻まれていましたが、これは消すことにしました。

この模様はおそらく文字ですが、左右どちらから読むのかも分かりませんし、反転させると意味合いが変わるおそれがあります。


裏面には具体的な情報は盛り込まず、使い込まれて古びた程度にとどめています。わざとらしくなく年月を感じさせる、そんなニュアンスを目指しました。


ノコギリの狩人証の造形において、こだわったポイントのひとつは刃の厚みです。

「ゲーム内グラフィックを物体にしたときの説得力」という点でも厚みは重要ですが、アクセサリーとしての着け心地と見栄えにも影響します。


しかし、ゲーム内グラフィックからは厚みを読み取れません。







最初の原型データではアクセサリーとしては薄すぎると判断し、一旦ぐっと厚みを持たせて、そこから調整をはじめました。

厚みが増すと迫力は出ますが、着け心地としては、ごつごつとしすぎていまいちです。サイズを変え、出力して確認。テスト鋳造も織り交ぜて調整を繰り返した末、製品版の厚みに辿り着いたのでした。


線が細い耽美な装いに、荒々しさと武骨さが共存するBloodborneの美術。ノコギリの意匠は、まさしくその武骨さの象徴の1つ。荒々しい魅力が漂う、絶妙な厚みを見事にとらえることができたのではないでしょうか!



形状に加え、ゲーム内グラフィックの再現で大切なのが色です。
ノコギリの狩人証は、茶色かがった金属として描かれています。
しかし、燻しと磨きの加減であらわれる銀と黒がシルバーの色合いであり、シルバーを茶色にするというのは非常に難しいのです。

我々はかつて同じような壁にぶち当たったことがありました。「スズメバチの指輪」です。




燻しでグラデーションを作り、特注の塗料で色合いを表現しています。

「スズメバチの指輪」で確立させたこの手法は、その後
「狼の指輪」「静かに眠る竜印の指輪」でも活用していますが、このノコギリの狩人証にも活かされることになりました。

おかげでこの色合いにはスムーズにたどり着くことができましたが、ひとつひとつ燻し、磨き、塗装していることに変わりはありませんので、手間暇はかかっています。


お手元に届いたとき、この色合いへのこだわりを思い出し、そして気に入って頂ければ嬉しいです。

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■車輪の狩人証


序盤に誰もが手に入れるノコギリの狩人証とは対照的に、ストーリー中盤、NPCイベントをこなさなければ手に入らない車輪の狩人証。

まともな会話の機会に恵まれないヤーナム探索において、「医療教会」や「ビルゲンワース」、「カインハースト」「穢れた血」について、熱心かつ紳士的に教えてくれるアルフレート。初見時の僕は、「安心したけど、わからないことが増えてしまった……。」と狼狽しました。

アルフレートとの交流を深めることでもらえますが、かなり血なまぐさい展開が待ち受けていたので、忘れられないアイテムの1つです。


形状は、そのものずばり車輪。
車輪というモチーフは、現実でも処刑や刑罰、拷問に用いられていました。Bloodborneの中でもそれは同様のようで、処刑隊の証として納得のデザインです。


一回目に上げていただいた原型です。ほとんど文句のない状態です。

ノコギリの狩人証でも、いえ、鴉も剣もすべてにおいて、一度目から理解度の高い原型データを提出してくれる大畠さん。なんておそろしい実力でしょう……!


修正指示の一例として、リムとスポークの接点に関するものがありましたが、ほぼその程度です。

修正前の造形では、手作り感の風合いに物足りなさがありました。(というものの、毎回一発目でここまで形状を掴んでくるのはすごすぎます)


スポークの造形に関しては、2パターンの案がありました。


ゲーム内グラフィックでは、スポークに浅く細かい模様が入っています。しかし、大畠さんから、「造形がきちんと出るか不安なので、ディテールの密度を下げたものも作ってみていいでしょうか」というご提案をしていただきました。


テスト鋳造の結果、粗さが前面に出たなという印象に。未使用に終わりましたが、こんなプロセスも経ていました。

スポークは、ゲーム中のとおり素直に造形したほうが見た目が良いようです。金属は実際に鋳造してみないとわからないので、トライ&エラーが肝心です。


※ ※ ※

テスト鋳造についていくつか。

3Dプリンターの出力品はレジン製ですので、形状の確認はできますが、金属になると印象ががらりと変わることの方が多いです。鋳造するとかならず収縮するため、サイズが変わることもあります。

大きさを変えて3Dプリンターで出力すれば、サイズを確かめることはできますが、いざ鋳造してみると予想よりも縮んだり、意外と縮まらなかったり、歪んでしまったり、予測できないことの連続です。

というわけで、テスト鋳造は重要な工程なのです。

湯道(鋳造時、金属が流れ込むルート)を変えることで解決。

湯道が正しくないと、成型不良や、”す”(気泡のようなものです)が発生します。
湯道が正しいかそうでないかというのは、試してみるまでわかりません。

”す”が入ることで割れてしまった星の瞳の狩人証。

最終仕様が固まるまでのテスト鋳造が、やけに多いと工場から指摘されることがあります。

鋳造テストを繰り返すほど、当然コストもかさみます……。それでもベストを尽くし、納得のいくものを皆様にお届けするため、日々アイデアを出し、調整を繰り返しているのでした。


※ ※ ※



ゲーム内グラフィックを再現すると、革紐を通したときに車輪が横を向いてしまうため、間にマルカンを挟んで車輪が正面を向くようにしています。

大畠さんにお願いして、車輪に合ったデザインのマルカンを作りおこしました。


ゲーム内グラフィックの再現という点はもちろん、美しさのあるアクセサリーとして、男女ともに着けやすいものに仕上がったと思います。


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∴桑原∴

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